Polydor Japan MGX7052 LP
R・シュトラウスとは、縁の深い巨匠が残した管弦楽集である。内容は感動を求めるよりも作品を知りたい人向けの演奏である。当然、壮麗な演奏を望む人にも不向きである。作品の本質が、ここに在ると言う程では無いが、無駄の無い簡潔な表現なので物足り無いと言われても仕方の無いレコードである。最初に「祝典前奏曲」が入っている。これは、1913年にウィーンのコンツェルトハウスが落成した時の記念曲である。だが、このレコードは、ベルリンフィルである。オルガンの壮麗な響きで始まる曲で規模も壮大であるが、曲の性格上、内容に豊かさは求められない!この手の曲は派手に華麗に演奏すれば良い程度のものである。だが、これは、楽団が充実しているのと、作為が無い禁欲的な巨匠の解釈によって充実した演奏になっているのは否定出来ない!残念ながら、それ以上の事を求めるのは間違いである。次は「ティル・オンゲンシュピューケルの愉快な悪戯」である。いつもの事だが、巨匠の演奏にはユーモアが無い!だがら他愛の無い曲が深刻になり、ティルは知能犯で完全犯罪を犯す人物に変貌を遂げる。まるで最高裁の裁判劇みたいな演奏である。続くは「ドン・ファン」である。引き締まった表現である。生真面目でプレイボーイのドン・ファンの哀愁が無い!これじゃあ、スーパーマンのクラーク・ケントである。やっぱり、この手の曲は色が無くては表現出来ない!それを言えば「サロメ」の7つのヴェールの踊りも同様である。この演奏からは、ピアズリーの絵やオスカー・ワイルドの退廃した精神世界が浮かばない!だが演奏は完全無欠である。畳み込む様に始まる強烈なリズムが凄い!ネットリした色気は無いが真撃そのものである。意外と一本調子かと思いきや細かい精神表現にギクリとする。圧倒的な演奏であり、聴き終わると疲労感が在る。

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