METEOR MCD-030 CD 1993
公開の場では、最後になった「第九」である。これは、1980年7月18日、ブレゲンツ音楽祭の実況録音である。だが残念ながら公認盤は、まだ発売されていない!ファンの方には、同年の大晦日にNHK・FMで放送されたのを御存知で、エアー・チェックされた方も御出でだろう!このCDは米盤だが放送を受信した物である事は明白である。ソリストは、ピラール・ローレンガー(S), ハンナ・シュヴァルツ(A), ホルスト・ラウベンタール(T), ペーター・ウィンベルガー(B)で楽団は、 ウィーン交響楽団とウィーン楽友協会合唱団の組合せである。おそらくオーストリア放送協会がマスターを所持していると推察する。それとNHKで追悼番組を放送した際のORFの追悼特集で、この演奏会の映像が流れていたのでテレビ中継された際の録画が残っている可能性も高い!尚、テレビでは、第3楽章の一部が放送された。この辺は、どこかでDVD化でもされないだろうか?そんな期待も在る演奏である。さて演奏内容だが、再生ボタンを押した途端にテープヒスが聴こえるが程々のダイナミックレンジを感じるのでオープンテープで録音した様である。音のキレも甘いがオケの量感は捉えている。生彩に乏しい音だが、これは巨匠の緊張度が歳のせいか緩んでいると言われても仕方が無かろう!緩やかに進行する演奏である。だが音楽が進むとそれなりに緊張度が増すのは実演ならではである。だから展開部では、それなりの迫力が在り真撃とも言える。どんどん熱を帯びてくると言うべきだろう!第2楽章である。冒頭のティンパニーの一撃が今一つである。全盛期と比べ穏やかな印象を受ける。リズム感も鈍重な感じがする。これが、ウィーンフィルだったら如何なものか?と思うが、巨匠の特色は捉えられている。それは武骨な感じがウィーンフィルより明確だからだ!第3楽章である。曲想は優美だが、寧ろ演奏は素朴で重量感が在り、心の声を聴く様である。終楽章である。冒頭のティンパニーが炸裂するが、やはりここを頂点として考えていたのは明白だ!野人の様な響きである。ピンと張った精神性が他の指揮者とは全く違い深い音楽が聴ける。だが次のバリトンが入る迄の歓喜の主題は強めに堂々としている。徐々に音楽が膨れ上がりあらゆる主題が重なるが、とても雄弁である。ウィンベルガーの声は品が在り堂々としている。ラウベンタールの張りの在る声も素晴らしい!シュヴァルツもどちらかと言えば太めの声なのでバランス的にも申し分無いと思う!ローレンガーは、それに輝きを加えた感じだ!合唱は最初は控え気味だが、曲が進むに従い熱を帯びて来るのでウォーミング・アップの問題かとも思う!進行が丁寧なのか造型が万全なのか揺ぎ無い演奏だ!そして全ての主題が昇華して舞い上がり曲は終わる。後に公認盤が発売される事を切望する。

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