Polydor Japan 92MG 0650/3(410 887-1) 4LP
二枚目を聴いてみる。曲は、シューベルトの交響曲ロ短調.D759とモーツァルトの交響曲第41番.K551「ジュピター」である。始めに「未完成」との異名の在るD759から聴いてみる。この曲は、最近の研究者から7番の交響曲と言われているが、どうも古くから8番「未完成」とセットの様に覚えた世代なので、今更7番と言われても何だか迷惑な話である。これは、ドヴォルザークの新世界が、嘗て5番だった事を思い出す世代も同様であろう!習慣とは、そう言うものである。さて、この演奏だが、収録は、3月19日、NHKホールで行なわれた。ウィーンフィルの来日公演で、社会現象化して伝説と言われたのも不思議な事だが、1959年のカラヤン来日の公演が既に過去に成った1975年当時と在っては、丁度良かったイベントと見ても良いだろう!この曲は、巨匠の十八番だが、流石に此処でも重厚でオーソドックスな演奏を聴かせる。第1楽章は永遠を感じさせる趣きが在り、深い奥行きの在る響きは、巨匠の存在を感じさせるのに充分なものが在る。解釈としてはドイツ風とも言える位だが、この頃のウィーンフィルも個性健在なのが嬉しい!勿論、緊張度も充分で、巨匠の怖さも解ろうと言うものだ!第2楽章の優美な調べが美しく、清楚な弦は、正しくウィーンフィルのシューベルトを聴いている実感が湧く!造型は、些か質実剛健だが、それが演奏をダレずに聴かせる要因にも成っている。旋律を息長く歌っているが、時に衝撃を感じる程のフォルテシモも素晴らしく、初めて、この曲を聴いた様な新鮮な思いがする。じっくり音楽を聴いた満足感も久々である。これも最近は終ぞ聴けないタイプの演奏だ!裏は、モーツァルトの交響曲第41番.K551「ジュピター」である。これは、3月25日の公演からだ!これも十八番なので、どうかと思ったが第1楽章を聴いた限りでは、もう少し覇気が在っても?と思う演奏で、どちらかと言うと巨匠の造型に楽団が乗った印象が在る。それでも確実にモーツァルトが鳴っているのが嬉しい!これは楽団に取っても十八番なので水準を保っていると見て良かろう!全ての旋律は律儀に歌われているが、いざと言う時に入魂の集中度を見せるのは、巨匠の存在だろう!第2楽章も同傾向のスタイルである。深く清楚な音楽が聴こえる。第3楽章は、スケール感が勝っているが、推進力に弱く重たいのが残念だ!リズム感は楽団に助けられている感じである。ここで良いのは終楽章の造型だろう!巨匠は複雑な造型に強い指揮者であるのが証明出来る演奏だ!リズムも上滑り無く音楽を構築していく姿は見事である。実演のせいか表情も熱っぽく燃え上がり曲は終わる。
92MG 0681


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