Polydor Japan 28MG0015 (2531 279) LP
晩年の傑作です。ドイツグラモフォンでは、剛と軟の対称的な指揮者として、ベルリンフィルのカラヤンとウィーンフィルのベームをライバルに仕立てる事で、ファンの心理を煽り販売戦略としていた訳ですが、両巨匠の他界後は、寂しいものですな!この頃は、新譜を見ても楽しかった事を思い出します。これは、そんな時代のレコードです。シューベルトの5番の交響曲は、1979年の収録で、シューマンの4番は、1978年でした。演奏評です。曲の性質からシューベルトから聴くのが順当と思われたので、こちらから批評しましょう!第1楽章冒頭は、意外と素っ気なく始まりますが、同時に朝日が窓から射し込む様な爽やかな印象を受けます。表情は終始穏やかで、聴いていて幸せな気分になります。第2楽章もそんな感じですが、終始品格を保っているのは、巨匠の芸格が高い事の証明でも在りますが、やはりウィーンフィルの特色が曲に合ってるからでしょうね!木管の色彩感もさる事ながら、弾み柔らかな弦楽器も素朴で美しいです。しかし情感に流されないのは、巨匠の音楽です。しっかりした造型感は演奏の安定性に繋がります。質実剛健な面が反映してるのは、第3楽章です。ここでは凛とした姿勢で音楽に取り組んでいるのが判ります。静と動が交差する楽章ですが、内容も深く、たっぷりとした音楽が満ち溢れてます。続く終楽章の躍動感も素晴らしいですが、その中に在って、少しも混濁せずに奥行き迄感じさせるのは流石です。次は、シューマンの交響曲第4番です。これは、何故今迄レコーディングが無かったか、不思議な位の名演です。ここでは巨匠が商用録音で時折やる造型だけが完璧で情感の無い、空っぽの演奏では在りません!晩年でも実演で聴けた、あの凄さが存在します。演奏評です。第1楽章冒頭の引き締まった響きから緊張の緩みも無く曲の要所を押さえながら進んで行きます。些か硬質で厳しいのが巨匠の特質ですが、ここでは魅力に転化してます。続く第2楽章も硬く、ハガネのカンタービレてな感じです。剛直な特質は、第3楽章により反映してます。岩を削る様なゴリゴリとしたリズムが素敵です。そして終楽章ですが、リズムが重いのは其のままですが、ウィーンフィルの弦が弾み、其なりの軽快感が在ります。そしてコーダに向かっての膨れ上がる音楽は、宛ら実演の様で素晴らしく、アナログ末期特有の厚く暖かく繊細な音質です。尚、こちらのレコードは、既にCD化されてますが、ジャケットのデザインが悪く、購買意欲が沸きません!案外、没後のレコードセールスが悪いのは、そんな処が原因かも知れません!残念ですね!

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