London Japan L18C5010 LP 1981
巨匠は戦前にハース版で初めてブルックナーの交響曲を録音した指揮者として知られてはいるが、戦後にLP期を迎えてからは、DECCAに2曲と独.DGGに2曲収録しただけに過ぎず、DECCAには、4番を再録したものの是こそ円熟期に再録して欲しかった5番は、とうとう録音されなかった。独.DGGにも実は、9番の企画も在ったのだが、それも流れてしまった。だが、その企画は、巨匠が乗り気だったかは不明だが、もし完成されていたら、どんな演奏だったかと興味深いのも事実である。さて、このレコードだが、追悼盤のステッカーが貼られている様に購入したのは、巨匠没後の事である。実は是で初めて巨匠のブルックナーを聴いた訳だが結果としては、とても良かった!収録は、1970年である。演奏様式としては、まだ全盛期の響きを残しているのが嬉しいが推進力も在り、引き締まったオーケストラの響きはDECCAの録音が冴えている事も在るだろうが、巨匠の特色で在るキッパリとした造型もより曲の特性を引き出す要因でもある。勿論、ウィーンフィルの特色も其れに関与しているが、聴いていて是ほど楽団の特色が堪能できるレコードもそう無いと思う!ついでに申せば、曲の規模も巨匠には丁度良い感じがする。さて第1楽章だがリズムが弾み聴いているとワクワクする。冒頭のトランペットによる主題も素晴らしいが、実に溌剌とした響きが録音も鮮明な事から実演宛らの迫力を感じる。テンポは全体に速めだ!混濁の無い明瞭な演奏だが、だからと言って神経質な感じもしない!フォルテの響きは少々威圧的だが初めて聴いた時は衝撃的だった!そんな感じで圧倒されながら終った第一楽章だった!この盤を始めて聴いた当時の小生は、まだ高校生だったので尚更かも知れない!第2楽章は、とても温かみの在る演奏だが同じ楽団を振ったクナッパーツブッシュのレコードと比べれば遥かに都会的な響きがする。巨匠のブルックナーは他の曲もそうだが作曲家の特色である何処か牧歌的な印象からは遠く曲が持つシンフォニックな一面を強調している。だから決してベタベタと情感に溺れる事は無い!そして更に第3楽章を聴くと意外とリズム感の良い指揮者で在った事が判る。ここでも聴く者が思わず背筋を伸ばさずにいられない偽りの無い音楽が此処に在る。続く終楽章は、その集大成と言うべきか?シャープな面と優しい表情が交差するが繋がりが実に良い!理性の高い音楽が其処に在る。終章の響きは壮大に締め括る。尚、エディションは、現在では、些か評判の悪いノヴァーク版第3稿を使用している。この演奏は後にCD化されたが管楽器が煩く感じるのは、どうした事だろう!アナログレコードで聴ける響きは誠に新鮮である。最後に苦言を申せば、第1楽章に21分も有する曲なのに無理して1枚に全曲を詰め込んだ為に第2楽章が、途中で切れてしまい、興が削れる点である。このレコードは、最初からそんなカッティングなのだろうか?音痩せは然程感じないものの、せめて1枚半でカッティングして欲しかった!聴く度にいつも不満に思う!


0