Toshiba EMI EAC-40211 LP
ノイエザッハリヒカイト、即ち新即物主義だが、ドイツでは主に第1次世界大戦後に生まれた所謂芸術運動である。其の特色は客観的に捉える表現芸術なのだが単なるリアリズムではなかった。古典的なリアリズム手法との違いは、より構成的表現に視点が置かれた事だが原理主義を基盤とした点ではシュールレアリズムにも通じる要素も在ったと言えるだろう!だが其の表現主義は音楽にも波及されていた。しかしながら音楽に於ては構成的表現に基盤が在り幻想的要素は除外されていたようだ。巨匠は若き日にそんな表現主義の洗礼を受けていたが、恐らく法学博士としての資格保持者ならではの独自の主観も在ったようにも思えて成らない!つまり巨匠の表現主義は性格上の影響も否定出来ないと言う事である。これから紹介するレコードは正にそんなレコードである。曲はブラームスの交響曲第4番である。楽団はドレスデン・シュターツカペレ、収録は1939年である。さて針を降ろすと「アレッ?」と言う位に素っ気無い!旋律もあまり思い入れも無くサラサラ進む。しかしだからと言って無味乾燥では無いのだが、この曲にある種の思い入れの在る人には少々物足りないかも知れない!そんな感じなので冒頭のテンポが早く感じたが主部のテンポは落ち着いている。聴いていると曲の構成が見えてくる。それは巨匠の楽曲に対する見識が定まっているからだが、実に構成的にしっかりした解釈で其れなりの説得力も勿論ある。全体に質実剛健な印象も在るが意外と堅苦しくない!それにしても当時のドレスデン・シュターツカペレの合奏能力は優秀である。重戦車が進む趣きも在るが、音楽も折り目正しい!終止部も真面目そのものである。第2楽章も同様の解釈だが、巨匠の演奏には変に粘ったりする箇所も無いので適切な表現であると言えるだろう!聴いていると「アンダンテなのだな?」と当り前の事に関心する。弦のアンサンブルも最高で音色も美しい!第3楽章は流石に巨匠も若く溌剌とした演奏だが、だからと言って勢いに任せる事も無く堅実な印象がある。どんどん熱を帯びて行く感じも良い!そして終楽章だが、やはり構成がしっかりしている。その為各主題の動きが良く解かる。例の巡礼動機は少し物足りない!足取りを踏締めながら進んで行く演奏には好感が持てる。残念なのは立体感に乏しい事位か?終止部のテンポは遅く堂々としている。尚余白にはハンガリー舞曲が収録されている。5番と6番が聴けるが曲のスケール感が然程大きい訳でも無いので交響曲よりは自由にやっている感じでテンポも意外と動く!動的な演奏で熱狂的でも在る。こちらの収録年は1938年である。

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