独.KOCH SCHWANN 3-1473-2 Y4 2CD 1995
R・シュトラウス生誕80周年記念の実況録音である。収録年は、1944年
6月11日との記載がある。
会場は、ウィーン国立歌劇場である。嘗ての独.DGG盤を御存知の方は、とても懐かしいCDだと思うのだが、アナログ時代には、十吋盤三枚組で発売されている。音の状態は年代的の割りには良好だ。しかしリマスタリングの余地は、まだありそうな感じがする。原版は、マグネトフォンである。機会があれば是非アナログ盤で聴き返したいものだ。さて演奏だが、序奏から雄弁で熱くうねっている。その辺の緊張感が記念公演ならではと言う感じがする。それは序幕からヨーゼフ・ヴィットの舞踏教師とパウル・シェフラーの音楽教師のやりとりの緊張度からも判る。火花散るとは、正にこの事なのかと思う程に熱い。流石に作曲家臨席の影響だとは思うが、この曲は元来、室内楽的な書法で書かれた作品だ。だが演奏の表情は大きく、スケール感も作品を上回る程だ。女性陣は、プリマドンナ役のマリア・ランニングが快調でリリックでありながらも余裕のある声を聴かせる。
作曲家役は、イルムガルト・ゼーフリートである。体当たりで役に挑む姿勢に好感が持てる。ツェルビネッタ役は、コロラトゥーラの難役だが、ここで歌うアルダ・ノニは、まずまずと言った処か?とても器用な印象だが線が細い感じがする。それでは男性陣はと言うとダントツに素晴らしいのが、マックス・ローレンツのバッカスである。特に終景は見事だと思う。
巨匠の指揮は、ここでも質実剛健だが、作品の構成には欠かせない要素があり、役目は果たしている。戦時中なので、オーケストラの痛手もあり、能力も落ちているが演奏自体の破線は無い。尚、余白には前年のマイスタージンガーの公演が抜粋で収録されている。
2010.01.11 より補足

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