DGG 445 332-2 2CD 1994
1954年のザルツブルク音楽祭で収録したものである。以前に伊.メロドラムでLP盤で発売されていたが、ようやくORFのマスターテープからDGGがCD化出来たので音質は鮮明である。だが演奏は、嘗ての作曲家生誕80周年公演から聞き比べると残念ながら魅力は半減している。どうも細部に拘り過ぎて伴奏にも雄弁さが不足しているようだ。ちなみに巨匠の同曲は、同音楽祭では、1965年に上演をされた時の映像が残されており、それも興味深い内容とも言える。
とは言え作曲家役のイルムガルト・ゼーフリートと音楽教師役のパウル・シェフラーは、10年前の記念公演よりは役を捉えており、一層、表現に膨らみを増した印象がある。ペーター・クラインは、舞踏教師役だが、知性を踏まえた節度ある表現は好感が持てる。それと確かに巨匠のR・シュトラウスの演奏には特有の硬さがあるのだが、それも節度故だろう。特に室内楽的な趣がある楽曲の場合は、構成も第一なので、その位でちょうど良いとも言えるだろう。
ここでは、リーザ・デラ=カーザーが、プリマドンナとアリアドネを兼ねている。聴いていて残念なのは、今ひとつ表現力に不足する点だが、その美声は気品もあり、捨てがたい魅力がある。それと意外に感心したのは、ヒルデ・ギューデンである。ここでは、コロラトゥーラ的な技巧を必要するツェルビネッタを演じているが、歌い回しがとても器用でさらりと歌ってしまったのには感心した。これは見事としか言いようがない。しかしそれに引き換え残念なのが、バッカスのルドルフ・ショックである。何か存在感に欠けると言おうか、印象が薄いのだ。その公演時は調子が悪かったのだろうか?と思う位に役に上手く声を乗せれない感じがした。最後に巨匠だが、作曲家を目の前にした公演では、雄弁な表現が耳についたのだが、本公演では精妙に音楽を組み立る事に重点が充てられている。これは単に緊張度の違いであるとも言えるが、楽曲に没頭している記念公演とはまた違った知性ある演奏である。
2010.03.06 より補足

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