Polydor Japan MGW 5136 LP
R・シュトラウスの唯一の交響曲に「アルプス交響曲」が在るが、1楽章形式なので、どちらかと言えば、他の作品同様、交響詩の様な内容で、標題音楽である。しかしながら其の規模は大きく、前代未聞と言えるべきものなので、編成の関係も在り、演奏回数が限られる作品でもある。だから商業録音もそう多くも無いのだが、現在なら兎も角、アナログ期に収録されたものは、当然、限られてしまう!この巨匠の録音当時は、作曲家の自作自演盤とコンヴィチュニー盤位しか無かったのでは在るまいか?巨匠は、R・シュトラウスとは親交が在り、其の作品に対する解釈も定評の在るものだったが、同じ客観性の強い演奏スタイルでも指揮者シュトラウスの演奏とは、些か異なる様だ!R・シュトラウスは、実際、指揮者としても高名で、喇叭吹込みからレコードの録音も在るが、自作以外の作品も早目のテンポでサラリと振っているのだが、何処かでノンビリした面が在り、意外と窮屈さが無い!だが、巨匠は、似た様な客観的な演奏スタイルでも求心性が強く、強剛な印象を受ける。実際、スコアに対しての分析も深い!だから辛口の解釈と定評が在ったのだが、R・シュトラウスの作品に関しては、作品によっては、もう少し広々としたスケール感も欲しい処である。巨匠が指揮した「アルプス交響曲」も聴いていると、其の点が残念だが、これが、ステレオ録音だったら?と思わざるを得ない!と言うのも独DGGは、この演奏が収録された1957年末には、ステレオ録音を開始しているからである。だが、この古巣のドレスデン・シュターツカペレとの録音は、同年の9月14〜18日にドレスデン.十字架教会へ出張して行われているので、機材上の理由も在ったのかも知れない!何だか一歩の差の様で残念である。だが、この演奏は、音響面とは無関係に平面で立体感に乏しい印象が在る。思えば作品自体の内容も深いかと言えば、意外とそうでは無いので当然かも知れない!しかし作品の真髄を明らかにしようとする姿勢は、この演奏とて変わりない!全ての音符が明快に鳴り響くのも、何時もの巨匠だ!この曲もR・シュトラウスの特色であるライトモティーフの組み合わせで成り立っているので聴いているだけでも何の描写か明らかなのだが、構成的にも巨匠の場合は万全なので、しっかり足を踏まえて表現をしている。演奏効果を狙わないのも巨匠ならではである。だが聴いていると、やはり立体感と言おうか、奥行きが欲しく成る演奏だ!この辺は、作品の限界なのだろうか?確かにこの作品は、オーケストラのデモンストレーション的な性格が高いので尚更か?もしかしたら作品の性格と巨匠の解釈にズレが在るのかも知れない!寧ろこの作品は、もっと開放された表現が合っていると思う!聴いていても何か吹っ切れない感じが残る。窮屈な印象は、そんな処から感じる様だ!是は、質実剛健な巨匠の音楽性が、裏目に出た演奏とみて良いだろう!同時期に録音されたものとしては、「英雄の生涯」が在るが、ウィーンフィルと再録したものが良かっただけに「アルプス交響曲」も再録して欲しかった!

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