King London MX 9005 LP
頑固爺さんコンビのベートーヴェンである。しかし、このレコードは余り話題にされない演奏だ!それは、録音が古い事も在るが割りとカタログ落ちも在るので尚更である。このDECCAのピアノ協奏曲も、どんな過程で企画されたか不明だが、些か中途半端な印象も受けるのも其の要因だろう!プロデューサーの意図も解らない!御存知の方もいらっしゃるだろうが、第1番は、フリードリッヒ・グリダとカール・ベーム、第2・4・5番は、クレメンス・クラウスとウィルヘルム・バックハウス、そして第3番は、バックハウスとベームで、楽団は、共にウィーンフィルである。この組み合わせだけにリハーサルは、どの様な状態で在ったか気になる処である。収録は、1950年である。バックハウスは、生前「鍵盤の獅子王」と言われた人である。それに音楽の法律家と揶揄された巨匠が伴奏を務めたレコードである。しかし本物の音楽家が、自身のベートーヴェンを演奏するのだから格別である。第3番に針を降ろすと何の混じりっけの無い純粋な音楽が聴こえてくる。生真面目だが品格の高い音楽である。内容も充実しているので聴いていて不足感が無い!序奏が終わるとバックハウスのピアノが始まるが、一見素朴ながら要所に即興的な閃きが在り、鮮やかな一面が、このレコードには在る。流石に若き日に超絶的技巧で唸らせた事は在る。精神的には高い水準に在る演奏と言える。それを証明しているのが第2楽章である。淡々とやっている様でいて昇華している。陰影は深く、誰も寄り尽けない程のレベルに達している。双方の演奏スタイルには共通点が在るのか造型が一致している。終楽章は、全盛期の巨匠と往時の技巧を彷彿とさせるバックハウスが共に燃え上がり、まるで実演の様な怒涛の響きを聴かせる。火花が散るとは、正にこの事である。それは、とても凄まじく聴いた後は、疲労感すら残る程である。これは名演だ!クレメンス・クラウスとの2番もカップリングされている。指揮者が違う事もあり、とてもエレガントな演奏だ!だがベームの様な緊張感は、薄れており、こちらの方が聴きやすいと言う人も居るかも知れない!時にモーツァルトを感じさせるリリシズムが此処にある。

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