一昨夜は、橦木倶楽部において、珍しい「一絃琴」の演奏会が催された。演者は、桑名に在住の「一絃琴楽風会」を主宰されている永川辰男氏である。
たった一本の絹の絃から様々な音色が醸し出されてくる。竿は桐、撥は象牙。撥は無くても爪弾きでも優しい音色が響く。
一絃琴の歴史は古く、古事記・日本書紀の時代にすでに記述がある。平安時代の「宇津保物語」は琴の伝授の物語であるし、「源氏物語」では、光源氏が琴の名手であり、琴の話がたくさん出てくる。中世となると、民間では琵琶法師の活動がクローズアップされるが、一絃琴の文化は、公家や神官を中心に教養の一つとして伝承され、近世に入ると、国学を受容した地方豪農の素封家や幕末の勤王の志士たちの間で一絃琴の弾き語りが流行したようだ。
永川氏は、「一絃琴は、音ではなく、その余韻を味わうもの」という。本居宣長が「もののあはれ」を感ずる日本古来の精神を第一としたが、一絃琴の世界はまさに「もののあはれ」の世界である。
当夜は、「須磨」、「赤壁の譜」、神々とのかたりとしてまとめられた「カムオギ」・「まほろば」・「ミズハノメ」・「ウズノメ(タマフリ)」、「伯仙操」、「寿賀」の演目を一絃琴のさびたる音色に合わせてしみじみと朗詠された。
このお屋敷には、ぴったりと合う音色であった。永川氏には来年もまた、ここで演じてもらうことをお約束した。来年の演目は、「平家物語」の一節。

琴楽思想について熱く語られる永川氏。

台の上で演じられているが、本来は膝の上に琴を置いて演ずるものであるらしい。

演奏会終了後、永川氏を囲み、一絃琴についてあれこれ質問をする。

岡村さんが、早速チャレンジする。昔ギター少年であっただけにメロディーをすぐに奏でることができた。すごい!

龍笛を習っているなおえさんもチャレンジ。和楽の素養があるだけに様になっている。

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