1996年9月25日〜10月9日/山梨県のデザイン研修制度を利用しスペインへ行
った時、以下は書いた報告書である。
しかし本稿は担当者によると内容が不適格であるので、こちらで別に書き上げる
といって、丸きり別の作文が報告書として配布された。ということは、大概の報
告書は役人の都合のよい作文で本人の素直な感想や思いではないということなの
か?クリエイティブには本人の感性が一番大切であり、役人の知識で作られた報
告書では血の通ったクリエイティブな思いは伝わらない。この制度は緊縮財政で
後に廃止されたそうだが所詮、金の切れ目が縁の切れ目というデザインに対する
不毛な世界が現実である。さしたる資源もなく技術力や感性があって今日の経済
が成り立つ我が日本にあって単なる事業としての、お役人の予算消化では何も生
まれない!!
今、読んでみると確かに不適格かも知れない、しかし制度上の都合で作文でとり
つくろっているのでは感性は育たないと思う・・・・
SSSSSSSSSSSSSSSSSSデザイン研修報告書SSSSSSSSSSSSSSSSSSS
スペインのデザインマインドとコンピュータ化するデザインと印刷事情を知るこ
とと伝統と文化、社会生活の違いを見ることで新たな自己のデザイン思考を見つ
め直して見たいと9月25日成田発イベリア航空モスクワ経由にてスペイン・マ
ドリッドへ向かいました。
久し振りの渡航とあって機上からの光景も見逃すまいと雲海の切れ間に見えるロ
シア大陸の大河のうねった川筋や道路、街並など地上では得ることの出来ないイ
ンスピレーションを感じながら20数時間後マドリッド空港へ到着。
友人の出迎えを受け投宿することにしました。翌日早速出発前に日本のJAGDAに
教えていただいたスペインの国際デザイン協会 AEPDにアポイントをとり訪問。
はるばる日本から来たということで快く招きいれていただきました。
友人の鈴木氏の子息ヨウスケ君に通訳をお願いし女性スタッフのアデサランダ嬢
にスペインに於けるデザイン事情をうかがいました。
第二次大戦後復興の為デザインというとインダストリーデザインつまり建物や物
の設計デザインを指しグラフィックデザインは80年代に入ってから意識されるよ
うになったということです。またヨーロッパではイタリアを除いて大学にデザイ
ン科がないとのことです。歴史と伝統に培われた市民的デザイン(看板等)が優
れておりデザインを売ると言う感覚は最近のことのようです。コンピュータ事情
については、だいぶ進んでいて小学校から取り入れているそうです。
彼女いわく、コンピュータはあくまで創作のツールであり、何をクリエイトする
かデザイナーのオリジナリティーがもっとも大切であると力説していました。
後日訪問したデザイナーも言っていましたがコンピュータを操作出来れば誰でも
作れデザイナーと思ってしまうのは危険であるとの意見をおっしゃっていました。
アデサランダ嬢の話を続けますが、異国の文化伝統に触発されても個人の
アイデア、オリジナリティーを発揮することが望ましく、だから日本の高田KENZO
や三宅一生は素晴しいし例えばアニメーションについてもアメリカらしさとか日
本スタイルのアニメのオリジナリティーを評価していました。
単に他の模倣やコピーで良いという考え方は国の魂を失うことになると締めくく
っていただきました。
前後しますが途中、デザイン料等について質問してみましたがお客の考え方次第
との答でした。That AllLight!納得!!
創作の現場であるマドリッド市内にあるデザイン事務所のリストをコピーしてい
ただき食事時間を過ぎての対応に深く感謝とお礼を述べ持参の風林火山Tシャツ
を差し上げると感激の表情をしてくれました。マドリッドは9月末といっても日
本の夏の日差しで,しばらく歩くと汗ばむほどですが日陰に入ると涼しく、すぐ
に汗が退くのが快適であり友好的な会話の後だったので第1ラウンドは大満足と
なりました。この日、夜は市内中心の繁華街へ友人の案内でショウウインドウの
ディスプレイを視察しました。
スペインの生活サイクルはご存じの方もいると思いますが昼食の時間が午後2時
から4時位まででその間はお店は言うにおよばず銀行もシャッターを降ろすとい
う日本では考えられない様子になれるまで時間がかかりました。
こんなCLOSEDされたお店のショウウインドウはこの国の物価を知るのに便利で
ありました。翌27日、昨日AEPDでいただいたリストを頼りにデザイン事務所へ
アポイントをとりましたが週末だということで日本からのデザイナーの訪問に興
味はあるが来週にしてくれとのことで、きょうはマドリッド市内の散策と「ゴヤ」
や「裸のマハ」で有名なプラド美術館を見学することにしました。
持ち物や金品には注意してとの友人の忠告がありましたが、当方研修であるゆえ
見てやろう撮って帰りたいと言う思いでビデオカメラ、リバーサルフィルム挿入
カメラそれぞれをバッグに入れ地図を頼りに出かけました。
英語なら何とかなるのですがスペイン語はローマ字表音に近いといえ喋れど相手
の答はサッパリ意味不明。見えない物盗りを意識しながら要所の撮影は確かに疲
れます。無事プラド美術館を見学、次の国立考古博物館への途中一服つけている
と通り掛かりの青年に駅の場所を尋ねられました。地図を互いに差し出しながら
説明していたところ、ふと、バッグを置いた右手に気配を感じ振り向くといつの
間にか別の男が隣に座っているのです。とっさに「Hey You!ナンダオマエワ。」
と声をあげると男は飛び退き手を振り振り去って行きましたが先の青年もしらば
っくれの風態で去っていきました。これが例の二人組の置き引きかとしばらく通
りを悠然と去っていく彼等の後ろ姿を睨んでいました。・・・・・・・・つづく

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