2005/11/19

敦賀/しおじ氏  霊魂補完計画

以下はI.MAGiCレイアウトコンテスト2005参加作品のレビューです。作品は結果発表のページからダウンロード可能です。

「われわれがやろうと思いながら怠けてやらなかったことを、勤勉な彼が遂行した」というのは、ゲーデルの不完全性定理の証明を受けてベルナイスが発した言葉だとか。
レイアウトコンテスト2005の大賞受賞作「敦賀」を拝見した初見の感想が、まさに私にとってのそれであったと。いや、私だけでなく、腕に覚えのあるVRM3ユーザーであれば、誰もがそう思ったことだろう。

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<しおじ氏作「敦賀」より>

誤解を招く表現であることを覚悟の上で言うならば、VRM3はまさにこの作品が存在するために生まれたソフトウェアである、とすら言いたくなる。この作品を見るためだけであっても、VRM3の全パッケージを購入して揃える価値がある、と断言しておこう。
可能であれば、この作品はDirectX9版ビュワーでお楽しみいただきたい。この作品の第一の魅力はその空間的な奥行きの深さにあり、VRM3標準のDirectX7版ビュワーはレンダリング範囲が狭いため、この作品の真の魅力を味あうことが出来ないように思うからだ。
VRMのみならず、鉄道模型レイアウトで現実の鉄道風景を再現するにあってんのもっとも困難な課題は「レイアウトには果てがあること」である。現実の風景はどこまでいっても果てがないが、レイアウトは有限の空間の中に収めなければならない。
この課題に対する解法はいくつか考えることが出来る。VRMにおける回避策的な解法としては、私がレイアウトコンテスト2003作品「Oh-Boke」で例示したような、すり鉢状の閉じた構造の中にレイアウトを閉じ込めてしまう、といった手法があるが、あくまでもこれはVRMであるから許される「変化球」に過ぎない。

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<しおじ氏作「敦賀」より>

しおじ氏の手腕のすごいところは、まさに「直球勝負」でこの課題を捻じ伏せている点に尽きる。「敦賀」はレイアウト端構造が開いており、しかもサイズが7,000x5,000mmとVRMレイアウトとしては小型の部類であるにもかかわらず、その世界の果てを感じさせない。いったい何が「敦賀」にこの空間の広がりを与えているのだろうか。
まず挙げられるのは、徹底して非幾何学的に配置されたトラックプランだ。ビュワーでひとしきり情景を楽しんでから、レイアウター画面でもじっくりご覧いただきたいと思うのだが、「敦賀」には幾何学的に対称な敷き方をされたレールがほとんど見当たらない。これは、エンドレースループを完結させるのに非常に手間がかかっていることを意味しており、これだけ複雑で、かつ自然に見えるトラックプランを作り上げたしおじ氏の豪腕を思い知らされる。
それだけでも大変であるのに、さらに「敦賀」ではレイアウトの各所に微妙な高低差が設けられており、これがやはり空間の広がりの演出に一役かっている。敦賀ループ部分の山地もまた、地道な手作業のみが成し得る微妙な凹凸からなっており、どこ1つとっても個性的な表情を持っている。
この2つの手間が、結果的に見るものをして「この先に何があるかわからない」という期待感を常に抱かせている。幾何学的配置の線路や平板な地形は、すぐにこの先になにがあるかが読めてしまう。これを、手間暇をかけて加えられたカオス的な要素がかき乱し、実サイズ以上の予測できない空間的な広がりを生むのである。

これが冒頭に「われわれがやろうと思いながら怠けてやらなかったことを、勤勉な彼が遂行した」とのベルナイスの言葉を引いた真意だ。一角のVRMユーザーであれば、これらの工夫がリアルな空間演出に欠かせないことには気付いているだろう。しかし、現実にそれを作ることが出来るか、と問われれば、億劫でなかなか手が動かないものまた真なり。まさにしおじ氏は、それを実直にやり遂げられた、という意味において、「敦賀」はありそうでなかった究極のVRM3レイアウトである、と思うのだ。

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<しおじ氏作「敦賀」より>

加えて、質実剛健な作品の中に「遊び心」を欠かさないところが、これまた氏が超一流のレイアウト職人たる所以。上掲スクリーンショットの地形テクスチャーで再現された「牛」と「刈穂干し」は、そのほんの一部に過ぎない。眺めれば眺めるほどに「あ、こんなトコロにも!!」との新しい発見があるレイアウト。まさに大賞を取るべくして生まれた「敦賀」は、有限の空間の中に無限の世界を封じ込めた「カントールの楽園」なのだ。

最後は、啓明氏のお言葉と、近頃ネット上でよく見かけるコピペネタをお借りして締めることにしよう。

慌てて私も全く同じ題材で応募しようかと思っていたからなんですと言い訳したのですが、どう見ても敦賀です。
本当にありがとうございました。


世界征服座標情報:http://maps.google.com/maps?f=q&hl=ja&geocode=&q=http:%2F%2Fwww.nodus.ne.jp%2FToretateVRM%2Fvrm.kml&t=h&ie=UTF8&ll=35.643827,136.075426&spn=0.001796,0.003482&z=18
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2008/3/19  20:53

投稿者:ちーずぴざ
18切符で北陸にふらっと遊びに行くと
必ずといっていいほど待たされる敦賀

今回初めて拝見しましたが、「まんま」でした。
わたくしが敦賀在住なら小躍りして喜んだだろう逸品です。

2005/11/18  22:28

投稿者:45-50s
>「この先に何があるかわからない」という期待感
>「あ、こんなトコロにも!!」

 マクロ的視点からもミクロからもよく練られていますよね。おいちゃんさんがしおじさんに2年ほど遅れをとっていると謙遜して仰っていましたが、むしろしおじさんが我々より2年先を行っている感を受けます。

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