冷淡な燃料投下

2006/1/16 | 投稿者: ghost

fox氏がこの週末に続けて公開されたこれこれについて一言。
おそらく、氏が一番言いたいのは、
手間のかかる事が軽視されて、容易に行なう事が重視されやすい環境では、表現力の根幹にある知識と経験の積み重ねは薄れて行ってしまうように感じたまでの次第です。

なのだろうとは思います。
私自身、具体的な作例などを通さずに、ただ「VRMは不自由だ」「もっと楽にしろ」とだけ発言される方々を苦々しく感じていないワケでもないので、わからないでもないんですが、敢えて申し上げると、それも「論者の立場に依存した程度の問題では?」という気がします。


私自身にも同様の思考過程を経て来た経験があることを示すべく、ちょっと脱線します。

もう10年以上も前の話ですが、私はかなり教条的なWindows否定論者でした。いや、私だけでなく、8ビットパソコンのプログラミング文化を経験した人は、大なり小なりそうだったと思います。曰く「アプリケーションは買うものではなく、作るものである」と。
当時は今のようにインターネットを通じて不特定多数へ訴えるなどということは容易ではなかったので、ミニコミ誌みたいなのを自分たちで作って、小さなコミュニティ相手にではありますが、そういう論陣を張ってみたりもしました。「創造の自由から選択の自由へのシフトを許すな!!」みたいな。こういう書き方すると、まるで左翼活動家みたいでアレですが。
結果的に、Windowsパソコンは市場を席巻しました。私自身は、「教育とは分かち合い高め合う行為である」と叩き込んでくれた恩師と、恩師を裏切って飛び込んだIT業界での経験を通して、考え方を改めました・・・厳密に言うと、自分以外の人間に自分と同じスタンスを要求することを止めました。詳細は本筋と関係ないので割愛しますが。

アセンブラ書けないヤツはキーボードに触れる資格なし、みたいなことを平気で放言しそうなノリだった(実際してたかも・・・恥ずかしい@)当時の私からすれば、VRMレイアウトなんてものは、ゼロから作ろうがコピーしようが大した差はなくて、それこそ「お釈迦様の手の平の上の猿」以外の何でもないんです、実のところ。
この話を通して私が言いたいのは「だからVRMなんてしょーもない」という短絡的なものではありません。私が言いたいのは、fox氏の提示している議論は結局のところ程度の問題であり、論者の匙加減ひとつで論評対象を「オリジナル」にも「パクリ」にでも出来る、という意味で不毛だ、と言うことです。
「購入者の認識と実物のズレ」と「絶対的なユーザビリティの低さ」が相乗してVRMの評価を押し下げている

私は45-50s氏の上引用の指摘に、二点(後述)を除いて強く共感しています。ここで氏のこの発言を取り上げたのは、fox氏が「漢字ドリル」を例に出していたからです。fox氏には申し訳ないですが、この文脈においてそれを持ち出すのは、少し古いです。
ドリル学習のような、学校教育における自己目的化した訓練的なスキームは最早過去のものです。それが実践レベルで実感できないとすれば、それは学習者に自発的自己目的化を促すことのできる指導者を育成するスキーム(私の恩師が、まさにその専門家でした)が出遅れているからです。
これをVRMの話題に訳すと、45-50s氏の言う「絶対的なユーザビリティの低さ」になります。ドリル学習がそれに適合できない学習者(無理に適合して算数嫌い・国語嫌いに陥る者を含めるとかなり多い)にとって無益であるのと同様に、VRMにも適合できないユーザーに対するケアに欠けるという弱点があります。
氏が「絶対的」と表現しておられるのが絶妙だと思うのですが、つまり現状のVRMシステムは、それを受け入れることの出来る人に取っては果てしなく魅力的である一方、最初の出会いの時点で受け入れることの出来なかった人にとっては、言葉が悪いですが「詐欺呼ばわり」されても仕方がないくらいに冷淡な一面も持っています。
無論、VRMが万人に受け入れられるべきものか否かという議論は別途存在しますし、そもそもそれはVRMシステムに固有の問題なのか(パソコン自体がまだまだ万人の道具ではない)という切り口−これが私が45-50s氏のご意見に完全に賛同しない理由の1つでもありますが−もあり得ます。
いずれにせよ、VRMがその持てるポテンシャル(可能性)を発揮しきれていない一因が前述した「冷淡な一面」にあるのは明らかに思えるので、そこにメスを入れるべきである、という45-50s氏の見解には共感するワケです。ただし、私はそれが「勝手に仕上が」るのを待たずに、自分自身で仕上げたいと思いますし、読者諸兄有志にもご協力いただきたいと思っていますが。これが2つ目の非賛同点ですね(笑)。

fox氏の議論は、読み方によっては、VRMに適合できないが何とか使ってみたいと思っているユーザーの最後の頼みの綱(コピー&ペースト、その他)を断ち切るニュアンス、つまりVRMの「冷淡な一面」に疑問を持つことなく、そのまま突きつけているような印象が感じられたので、こうして取り上げてみました。
それはある意味において、ドリル学習に適合できない学習者に「オマエはまっとうな大人になれない」と断言してしまう無神経な教師くらいに残酷な話のように思うワケです。ましてやVRMは趣味でやるものですから、なおのことです。
特に、fox氏はご自身がどのようにお考えになろうとも「スーパーバイザー」の肩書きを背負ってしまっておいでですから、その発言は「個人的な意見ですよ」と但し書きをしても、オフィシャル=I.MAGiCの見解(の一部)と取られてしまう恐れもあります。そういう具合なので、氏にはいささか不愉快な内容になるかも知れないことを覚悟の上で書いてみた次第です。

なお、言うまでもなく、私が本稿を書いた目的はfox氏をどうこうすることではなく、読者諸兄にこのような考え方もあることを例示したかったからです。そして、それが必ずしも万人に理解されないであろうことをわかった上で、このようなエントリを立てている時点で、私自身もまた十分に「冷淡」なのです、切腹。
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