2011/7/4

『さや侍』  映画

大阪人の悪いところの一つ。それは総お笑い評論家と化しているところ。
だってしゃーないやん。そういう風に生まれ育ってしまったんやから。
関西のお笑いが身についてしまったためか関東系のお笑い芸人さんは苦手。
一番嫌いな漫才コンビがテレビに出てくる度チャンネルを変える。

脱藩の罪で追われる野見勘十郎(野見隆明)と娘のたえ(熊田聖亜)。
彼の腰には刀のない鞘だけが差されていた。
賞金稼ぎたち(りょう・ROLLY・腹筋善之介)からは
なんとか逃れていたが、多幸藩に捕まってしまう。
藩主(國村隼)の若君は母を病で失って以来笑わなくなっており、
勘十郎はお白州で若君を30日以内に笑わせれば無罪放免、
できなければ切腹という「30日の業」を言い渡される。


最初カメラがどうも落ち着かないと言うか、
腰が据わってないと言うか、不安にさせられる。
主役の野見さんが普通の役者さんのように
見栄えの良い動作をしてくれないので仕方ない。
それも話が本題のお笑いに入るとすぐにそれも気にならなくなった。
ところが残念ながら勘十郎のお笑い芸、私は全く笑えない。
その辺の数十年前の素人参加番組の奇人変人コーナーか、
今なら若手芸人の罰ゲームのレベル。決して新春隠し芸大会ではない。
うどんを鼻から食べたり、多幸藩名物・蛸との格闘なんて悪趣味で辟易する。
幼い娘からは「生き恥さらすよりご自害なさいませ」と叱責される始末。

もちろん若君も笑わない。
それより気になったのはたえが全く笑っていないことだった。
なかなか達者な子役さん、怒ってばかりなのだ。
若君よりも自分の娘を笑わせることを考えた方がいいんじゃないか。
と思った途端、彼女が笑うんである。松本人志監督にしてやられた。
こりゃ一本取られたわい、と自分の額を打ちたくなった。
たえが父を支える牢の見張り役たち(板尾創路・柄本時生)と心を通わせ、
父親への誇りに気づく時、本当に幸せそうな顔で笑ってくれる。
そしてその笑い声を聞いた勘十郎も微笑むんである。
それは自分の役割の終わりを知った満足げな表情。
おお。野見さん、ちゃんと演技してるではないか。
笑いって他人をバカにしてる時だけ現れるもんじゃないのだ。

若君は笑わないまま日が過ぎていく。
見張り役だけでなく、町人や勘十郎の首を狙っていたはずの賞金稼ぎ、
藩主の殿様まで勘十郎を応援するようになっていた。
そして最期に彼は失っていた武士の魂を取り戻す。
(ここでまた野見さんの役者っぷりが上がる!)

いい話だ。親と子、命の繋がりへの想いを語る。
せっかくのいい話がもったいない。時代劇として大ざっばなのだ。
もっと細かく町の風景や時代考証をしてくれれば、さらに見ごたえがあったのに。
武士の刀はそう簡単に抜けるようにはできていない。
いくら下級武士でも立ち居振る舞いっちゅうもんがあるやろうに。
賞金稼ぎたちが必殺仕事人風でも、僧侶(竹原ピストル)が
突然朗々と歌いだしても構わない。もちろん野見さんが主役でも。
『大日本人』よりこちらをだれかリメイクしてくれないものか。
http://www.sayazamurai.com/
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