映画『
機動戦士ガンダム逆襲のシャア』(1988年,昭和63年)がこの11/18(土)〜20(月)までの3日の間GyaO!で無料配信されていたので、PCのモニタ上でもチェックした。
『
機動戦士ガンダム逆襲のシャア』(以下、『
逆シャア』)はかれこれ約30年前のアニメ映画なので、『世』の字の字義の通りに、もう今となっては既に一世代前の作品にもなるのかと思います。
『逆シャア』のノベライズ版『
ハイ・ストリーマー』等については当ブログ内でも過去に触れたこともありますが、映画『逆シャア』の内容そのものについては未だあまり触れたことがありませんでした。
この機会に『逆シャア』の映画の内容についても、ごく個人的な5段階評価&感想等を、UPして残しておきたいと思います。
(色文字部分は後日追記分)
面白さ 5.0 個人的には 6.0 以上 ∞
お薦め度
ガンヲタな人 6.0 以上 ∞
今時の一般人 5.0 前後
反ヲタな人々 3.0 前後
『逆シャア』がどんな物語かを一言で説明するとしたら・・・、
以下、ネタバレあり。注意、であります。
『
さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』
(1978年,昭和53年)を観たことのある人になら、「『逆シャア』は『
さらば機動戦士ガンダム 哀の戦士たち』だよ」と言えば、だいたいどんな内容かを解ってもらえるかと思います。
青く輝く水の星を背にして守る終盤の展開などは、ともに圧巻なのであります。


また、近年の『
宇宙戦艦ヤマト2199』で言うと、第23話『たった一人の戦争』の回などは『
宇宙戦艦ヤマト 逆襲のデスラー』と言った感じの内容でもあります。
スターシャのため,イスカンダルとの大統合のために633工区を衛星軌道上から帝都バレラスに落とすデスラーが、
ララァの魂を
アムロから取り返すため,父
ジオンの遺業を実現するために
アクシズを宇宙から
香港に落とす
シャアにも重なります。
しかしスターシャ・イスカンダルの心はアベルト・デスラーよりも落命した古代守に向いており、同じくララァの魂もアムロに向いております。(シャアはアムロを自分に振り向かせたいララァに利用されているだけであります。)
そして各々の目論見は、それぞれヤマトやガンダムによって阻止されてしまうのです。
デウスーラは
レウルーラの韻を踏んでいるし、アベルト・デスラーの中の人は
ギュネイ・ガスと同じだし、『逆シャア』を押さえた上で『ヤマト2199』第23話を観ると、また味わい深いものがありますが、ここでは論点がズレるので以下、省略。
ハリウッド映画とかで言うと、『
アルマゲドン』とかが内容が近いのかなぁ?とも感じます。
てゆーか、もしかして『逆シャア』が元ネタ?
『逆シャア』の
アムロは、それまでのアムロとはアムロが違います。見違えるようなスーパーヒーローであり、U.C.0093年の当時では、恐らくは人類最強の
ニュータイプでもあります。
腐ってたり鬱ってたり脱走したり引き籠ってたり,或いは危険人物として飼い殺しにされていた頃の
アムロ・レイとは、全く別次元のヒーローキャラであります。
それまでのアムロの人生が抱えていた様々な鬱憤を、ここで全て打ち晴らすかのような快刀乱麻な大活劇が痛快です。『逆シャア』のアムロは、アムロ派の人にとっては必見。
『ガンダム』は「
リアルロボットもの」の筈なのに、『逆シャア』のアムロは「
スーパーロボットもの」の主人公のようなスーパーヒーローぶりであります。
この辺りの描写は、本来あまり『ガンダム』らしくはないのかも。ガンダムの主人公は、若くして人生を引き摺り鬱屈していないと「らしくない」と思います。
・・・そんなアムロらしくない所が、殉職の伏線だったりもするのかも?
SFの苦手な人が、ガンダムの予備知識の全く無い状態で『逆シャア』を観たとしたら・・・、


何の説明の無いままに冒頭からいきなり物語の核心に入ってしまい、謎が謎のまま突然終わってしまう映画なので、狐につままれた気分にも陥ってしまうのではないか?と。メビウスの宇宙を越え過ぎ? ^^;
「Beyond the time」

とかって謳い上げられても、ガンダム初心者の人には、一度観ただけでは恐らくは理解不能で意味不明かと思います。
「読書百遍 意 自ずから通ず」とも言いますが、ガンダムの核心を理解したくて未だ理解できていない人の場合には、『逆シャア』をこそ繰り返し観ることを個人的にはお薦め。てゆーか、超お薦め。
『逆シャア』のラストについては永い間ナゾのままでしたが、21世紀が明けて平成も20年代に入ってから『
機動戦士ガンダムユニコーン』(以下、『
ガンダムUC』)によって、一つの解釈が公式に与えられたのだと思います。
個々のガンダムファンの間で互いに納得のできる最大公約数的な解釈が収斂されるだけの年月が、それなりに必要だったのかと感じます。

ララァの魂はアムロだけを連れてこの世を去ったようであります。
クェスの父親代わりにはなろうとはしなかったシャアが、ララァには自分の母親代わりを望んでも、それはイワユル「大佐、いけません」ってヤツだと思います。
父の遺業を果たせず、ララァの魂をもアムロから取り返せず、一人虚しくこの世に取り残された
シャア・アズナブルのその後の人生が、『ガンダムUC』では何処か寂しげにも描かれております。
『ガンダムUC』は悪くは無いんだけれども、“アムロのいない『ガンダム』”に“ヤン・ウェンリーのいない『銀英伝』”や“オスカルのいない『ベルばら』”にも似たような寂しさを感じるのは、多分おいらがアムロ派のガンヲタだからだと思うっス。
『逆シャア』のラストがどーしても気になる人の場合には、今の時代的には『ガンダムUC』もお薦めかと。
モビルスーツ等のメカデザインについても、『逆シャア』は“ガンダム”シリーズ全体を通しても、格段に良いと感じます。
ギラ・ドーガが
ハイ・ザック以上に
量産型ザクの正統系譜に見えるし、
サザビーもちゃんと
シャア専用ザクの正統系譜にも見えます。
ジェガンも
ネモ以上に
ジムに見えるし、ジム以上に
アナハイムっぽくも見えます。
ジェガンが単なる主役メカの引き立て役などではなくて、ギラ・ドーガと互角な性能として描かれている所も個人的には好みでした。
リ・ガズィも
Ζガンダムの簡易生産型に見えるし、『
1stガンダム』における
ガンキャノンの位置をも押えているのだと思います。
『逆シャア』や『
ガンダム0080 ポケットの中の戦争』は、デザイン的にはいわゆる“
出渕ガンダム”でありますが、この辺りのデザインは個人的には好みであります。
左右非対称なデザインの
RX-93νガンダムなどは、個人的には“ガンダム”シリーズの中でも最も秀逸だと感じます。
艦船デザインについても、連邦軍の新型艦
ラー・カイラムや
クラップ級などはちゃんと
サラミス級の発展型に見えるし、
ネオ・ジオン軍のレウルーラなどもちゃんと
グワジン級の正統系譜にも見えます。
これらのデザインは『ガンダムUC』が制作された平成20年代の今日でも充分に通用するものだったのだと思います。
当時は未だ今の時代とは違って殆どCGが使われておりません。モビルスーツの動きも手描き動画の時代です。
板野サーカスのような動きの派手さは抑え気味ですが、それでもモビルスーツの動きは当時としては圧巻だと思います。
今の時代に手描きで同じ動画を作ろうとしても、手間暇や人件費を考えるとCG技術の発達した今の時代では、CGに比べて費用がかかり過ぎるような気もします。

あのレベルの手描き動画は、今後は
ロストテクノロジーになって行くのかも。
国内の商業アニメでのCGもこの『逆シャア』の辺りから本格的に使われ始めた記憶があります。
『逆シャア』以前のアニメ作品ではCGが手描きアニメの画面の中では浮いてしまい、画面の中にあまり上手く馴染んでいない印象がありましたが、この『逆シャア』では画面に割とよく馴染めていたと思います。
特に“シリンダーの中に街がある”宇宙に浮かぶ
ロンデニオン・コロニーの外観の動きなどは、当時としては大変に素晴らしいと感じたものでした。
その当時はパソコンを未だマイコンとも言っていたよーな気も…。Windowsなんてモチロンまだ無くて、PC98がようやく普及し始めた頃だったのではないかと。
また当時は今日のPC塗りとは違って、セル画も背景画も絵の具での着色です。

画材としての絵の具の弱点として、混色すればするほど灰色がかって彩度が落ちます。
今の時代のPC塗りなら、どんなに微妙な中間色でもパステルカラーのように極限まで明度や彩度を上げることも出来るかと思います。
『逆シャア』はPC塗りの無かった当時としては充分に発色の良いアニメ作品かとは思いますが、今の時代のPC塗りのアニメ作品の発色と比べると、絵の具塗りの限界や時代の違いを感じてしまいます。
キャラデザについては『逆シャア』は“
北爪ガンダム”。『
ガンダムΖΖ(ダブル・ゼータ)』や『逆シャア』の辺りは“北爪ガンダム”であります。
キャラの動きの見せ方とかタイミングや間が少し変。「芝居が大根」っぽくも感じます。ただ、わざと“大根“っぽく見せているフシも窺えて、実はそこに何か隠れたメッセージとかがありそうで、ガンダムという作品はなかなか油断がなりません。
音楽的には『逆シャア』は“
三枝ガンダム”。『
Ζ(ゼータ)ガンダム』や『逆シャア』の頃の音楽が
三枝成彰氏であります。個人的には好みの音であります。


『Ζ』の頃よりもガンダムに慣れたのか、『Ζ』以上に『逆シャア』の音楽はガンダムの世界観に馴染んでいたようにも感じます。良いです。
『逆シャア』の音楽は近年のTV番組ではテレ東の『池の水ぜんぶ抜く』の番組でも一部BGMに使われているようであります。カッコいいのであります。
・・・11/26(日)の放送第5弾では、『逆シャア』の他にも『ヱヴァ』や『トップ』,『ガルパン』等の音楽もBGMに使われておりました。
一ガンヲタ的には“ガンダム”が一つのジャンルとしても確立された今の時代にあっては、世間では「猫も杓子もガンダムガンダム」,「よく解んないけどガンダムガンダム」ってな調子にも感じられます。
ガンダムの予備知識が何となく世間に流布されたかの如くな今日の世情にあっては、もし人が“ガンダム”シリーズの核心を理解したいのであれば、取り敢えず『逆シャア』1本を観れば良いかと思います。時間にして約2時間弱で“ガンダム”シリーズの核心を理解することが出来るかと思います。
ガンダム初心者の人にどれか1本をお薦めするのなら、一ガンヲタとしては今の時代的には『逆シャア』だと思います。個人的には超お薦め。





公開当時のチラシが残っていたので画像をUPして見た。
『逆シャア』は今ではもう古い作品とは言え、『1st』TV版と同じくガンダムの神髄中の神髄 , 秘伝中の秘伝、な扱いで良いかと一ガンヲタ的には思います。
ごく短い期間とは言え、『逆シャア』を無料で配信するのは、安売りのし過ぎにも思えます。
『逆シャア』の無料配信は、ごく稀に,ごく短い期間での配信で良いかと思えます。
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ネット上にある公式系の予告編動画を貼って見た。
ただ…、本編の面白さに比べると、この予告編は個人的には今一つな気も…。

『逆シャア』の音楽集 (うちにあるのはLP版)

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