『
戦場のピアニスト』を改めて観たので、今更ですがこの機会に、以下少しだけ感想を。
(ネタバレあり、要注意です)
ユダヤ人ピアニストの主人公
ウワディスワフ・シュピルマンの、第二次大戦中の
ワルシャワ市街でのサバイバルを描いた映画でした。
また同時に、この映画は
ポーランドの首都
ワルシャワの大戦中の移り変わりを描いた映画でもあると思います。
映画の前半では主に
ゲットーの様子が克明に描かれております。
ナチスによって多くのユダヤ人が閉じ込められた
ワルシャワ・ゲットーの描写は、観ていて本当に辛いものがあります。
ナチ武装親衛隊の支配する
ワルシャワ・ゲットーは、ユダヤ人にとってはまさに「
悪魔と地獄の取り合わせ」と言った所でしょう。
逆の見方をすれば、これこそが
レイシスト(差別主義者)どもにとっての、1つの究極の理想郷なのでしょう。おぞましい限りです。
このような地獄をこの地上に二度と現出させないためにも、今後は人種差別思想を芽のうちに皆全て悉く封印すべきと考えます。
この映画は一人でも多くの善人に観て欲しいと思える反面、差別の実践的なノウハウが過去の実例として結果的には詳細に説明されてしまっている映画でもあるので、悪人には絶対に観せたくない映画であるとも感じました。
後日、デジタルリマスター版の予告編動画を見つけたので貼って見た。
後半のゲットー脱出後の潜伏生活の描写には、
サバイバルサスペンスな
戦争アクション映画として、商業映画的にも充分に面白みがあると思います。

しかしこの映画については、題材の重大さを考えると、単に面白さだけで語っても良いのか? 個人的には少々迷う所でもあります。
また、ユダヤ人ピアニストの主人公シュピルマンを助ける側の人々の立場から考えれば、支配権力が個々人に悪事悪行を強制する世の中にあっては、各々の個々人たちはどうやって権力側の目を盗んで自らの良心に従った行動を取るべきか?がテーマの1つにもなっているようにも感じました。
それはユダヤ人の抵抗組織やポーランド人によるユダヤ人支援組織ばかりではなく、シュピルマンを助けた
ユダヤ人ゲットー警察の署長や
ドイツ国防軍の
ホーゼンフェルト大尉についても言えることだと思います。
物語としてはカブっているエピソードや登場人物が無駄に多いのは、恐らくはそれらが実際にあった事実だからこそ省けなかったのではないか?と感じます。
全くの作り物の物語であるのなら、商業娯楽映画としては登場人物や武装蜂起の数はもっと整理されるべきだし、また主人公を助けたドイツ国防軍のホーゼンフェルト大尉が捕えられているシーンではなく、寧ろユダヤ人を虐げたナチ武装親衛隊の隊員たちが裁かれているシーンをこそ入れるべきだと思います。
しかしそれを敢えてそうしないのは、この映画がシュピルマンを巡る事実により忠実であろうとしているからだと思います。
この映画では独軍の戦車や野戦砲、兵員輸送装甲車も登場します。
野戦砲は恐らくは
75ミリ歩兵砲かと。兵員輸送装甲車は
ハノマーク兵員輸送装甲車Sd.Kfz251の多分D型かと。
戦車は24口径75ミリ榴弾砲装備の回転砲塔で、1944年(昭和19年)のワルシャワ蜂起の時点での登場だったので、恐らくは
V号N型戦車かと、…多分。
独軍の小火器では
ルガーP08拳銃、
MP40シュマイザー短機関銃などが登場します。
瓦礫と化した屋内でガスマスクをつけたドイツ兵の持つ白刃を帯びたライフルも、銃剣の鈍い光り方が怖さをよく演出できていたと思います。
エンドクレジットでのピアノの演奏シーンは圧巻でした。

ピアノ素人のおいらにも、“神技の如き演奏力である”ということだけは判ります。エンドクレジットの映像部分だけでも充分に凄かった。これだけでも充分にお薦めかも。
最後にごく個人的な5段階評価を。
観るべき度 4.5〜5.0 以上
お薦め度 4.0 以上
トラウマ度 3.5 以上
面白さ 4.5 以上
重いテーマなだけになかなか無邪気にはお薦めしにくいのですが、今の時代の大人としては、観るべき映画の1つでもあると思います。
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