洋画『
渚にて』(1959年,モノクロ134分)を観た。
核戦争後の地上で南半球の
豪州に僅かに生き残った人間達が、放射能で徐々に死に絶えて行く物語。
放射能で人間が全て死滅した筈の北半球の
サンディエゴから、謎の無電が間断なく発信されます。
豪州の生き残った人間達はその発信源における生存者の有無を確認するために、
メルボルンから米国西海岸へ、大気中の放射能を避けるべく潜水艦を出航させます。
アニメ作品に喩えて言うと、内容的には
イスカンダルからの救いの使者が現れない『宇宙戦艦ヤマト』って感じ?
或いは『風が吹くとき』の豪州版って感じ?
南半球の豪州にのみ人間が生き残れたと言うことは、西側資本主義陣営は東側共産主義陣営に核戦争で勝利を収めたようではあります。「核戦争による勝利」の“代償”が描かれているようにも感じました。
この機会にごく個人的な5段階評価&感想等を。
(ややネタバレあり、注意)
面白さ
3.0〜3.5 今の時代的には時間が長すぎるかと。
コレ系の映画なら1980年の邦画『
復活の日』の方が未だ救いがある上に、派手でケレン味があって面白いです。
しかし観終わった後の怖さなら、この『渚にて』の方が凄まじいと思います。
お薦め度
4.0以上 避けるべき有り得る未来図
冷戦後の今の時代なら、突発的な全面核戦争は起こりにくいかとは思います。
しかし核自爆テロによる戦術核の限定使用からのエスカレートによる全面核戦争は、今の時代には寧ろ充分に有り得るのではないか?と恐れます。
決してあってはならない未来図と言う意味では、お薦め度は今の時代にあっても充分に高いかと思います。
洋画『
博士の異常な愛情』のその後の世界を描いたような内容でもあるので、『博士の異常な愛情』が面白かった人にはこの『渚にて』も併せてお薦めかも。
潜水艦映画でもあるので、潜水艦映画好きの御仁にもお薦め度は高いかと。
映画の舞台である1964年は日本で言うと昭和39年であり、東京五輪や新幹線開業の年でもあります。製作は1959年ですが当時の豪州メルボルンの映像は鉄ヲタ的には興味深いかも。
他には
グレゴリー・ペックのファンの人にはお薦めかと。
社会風刺度
5.0 生者なき核戦争の勝利は人間の敗北かと。
映像的には派手さや怖さは殆どありませんが、ある意味で物凄く怖い映画です。
毒々しい映像表現も全くありません。むしろ映像的には美しいくらいだと思います。カラー映画には無いモノクロ映像の美しさがあると思います。
『渚にて』は映画だから儚く美しく見せておりますが、実際に核戦争をしてしまうような人間社会なら、核戦争後の世の中は文明と社会秩序が崩壊し、呆れ果てるくらいに醜い争いが最期まで繰り返されるのではないか?と思います。(破滅に瀕しても尚この映画のように社会秩序を整然と保っていられるような人間社会なら、そもそも核戦争など起こさずに済むでしょう。)
そこを敢えて儚く美しく見せている所が、この映画の怖さでもあると思います。
古い映画ではありますが、今の時代にあっても充分にお薦めな映画かと思います。
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