ジークカイザー・ラインハルト!
『
最良の専制政治』と『
最悪の民主政治』、どちらを“是”とするか?
読者に究極の選択を迫る、『
銀河英雄伝説』での最大の問いかと思います。
ここ最近の『
銀英伝』の動きについては、夏頃に新アニメ版の話が聞こえて来たり、この秋からは
ヤングジャンプでの連載が始まったりと、熱くて新しい話題が続いております。
1980年代の当時を振り返ると、隔世の感があります。
まさに「
銀河の歴史がまた一ページ」という感慨を深くいたします。
『
銀河英雄伝説』(以下、『
銀英伝』)が読者に迫る究極の選択
(『最良の専制政治』と『最悪の民主政治』、どちらを“是”とするのか?)の問いについて、
この機会に一読者的,ごく個人的な回答を備忘録的にUPしておきたいと思います。
(あくまでも「ごく個人的な回答」です。悪しからず、であります。以下、その内容を。)
作中では
ヤン・ウェンリーは、
ラインハルト・フォン・ローエングラム施政下の『最良の専制政治』と、
ヨブ・トリューニヒトに乗っ取られた『最悪の民主政治』の両方の実例を見せ付けられた上で、それでも敢えて尚『最悪の民主政治』の方を“是”とします。
それは『銀英伝』の読者には既に周知の事実であります。
ヤン・ウェンリーは大方の読者感情と同様に、ラインハルトには敬意を抱く一方で、常日頃から「トリューニヒトの○×野郎っ!」等と毒づきながらも、です。
ここで一読者として個人的に気になるのは、「『
民主主義』=『
共和主義』」という混同が、作中では何度も何度も繰り返されている点であります。
作者は『
民主主義≠共和主義』と言う事実を充分に理解している上で、故意に『民主主義=共和主義』という混同を、作中では敢えて何度も繰り返しているのではないでしょうか?
作中でも『民主主義』の話が、いつの間にか『共和主義』の話にスリ替わっていることが、往々にして多々あります。
両者は
『社会主義』と『共産主義』くらいに全く違う別モノの筈です。それを作中ではわざと混同させているのだと思えます。
銀河帝国の
門閥貴族たちが許せないのは『共和主義』なのであって、必ずしも『民主主義』が許せない訳ではないようです。
銀河帝国の貴族制の下でも、門閥貴族たちの間では各々の権勢に応じて、『民主主義』の力学が作中でも働いているようにも見受けられます。
帝国貴族たちは、貴族同士の間では
宮廷や
社交界を媒体として、割と民主的な力学で物事を決めているようでさえもあります。
対して、
同盟政府のエラい政治屋たちは、「共和主義万歳」とはノタマイますが、「民主主義に乾杯」とは言いません。
作中の同盟政府の一部のエラい政治屋どもは、『共和主義』の概念を狡猾に利用する一方で、『民主主義』の制度や理念を
帝国人以上に蔑んでいるようでさえもあります。
明らかに作者は『民主主義』と『共和主義』とを、明確な意図の元に使い分けていることが窺えるかと思います。
現代の現実世界においても、国名においては『何某共和国』などと騙りながら、実際には事実上の『専制王朝』で『絶対王政』な後進国の某北隣国もある一方で、
国王を戴きながら『民主主義』や『社会主義』の成熟した、
北欧諸国や
英連邦諸国のような、『王国』な先進国の実例も少なからず実在します。
『銀英伝』が読者に突き付けている問いについては、
『民主主義』でさえあれば、『共和主義』には必ずしも拘らなくても良いのではないか?とも個人的には感じてしまいます。
作中でのスローガン風に言えば、『ビバ!デモクラシー!』でさえあれば、『ジーク・ライヒ!』でも別に構わないのではないか?ともごく個人的には感じてしまいます。
“
名ばかり共和国”では、タテマエ上はあくまでも『平等』ですが、実際には“
明白なる公然たる秘密”として、
歴然たる身分差別・階級社会が存在します。
・・・例えば「一般人民<党員<党地方幹部<党中央幹部<国家元首の親族(事実上の“
王族”)」のような。
“名ばかり共和国”,“
エセ共和主義”の実態は、実はそれこそが『専制政治』そのものではないか?とも思えてしまいます。『最悪の専制政治』ですらも有り得るか?とも思えます。
そしてそれは『最悪の“共和”政治』でもあるのではないでしょうか。
作中では『共和主義』を叫ぶ同盟政府の
エラい政治屋どもこそが、実は同盟国内の“
特権階級”でもあります。
それを糾弾した
ジェシカ・エドワーズは命を狙われ、後に殺されてしまいます。
ラインハルトの『
最良の専制政治』と、トリューニヒトの『
最悪のエセ共和政治』との二者択一なら、
読者感情としては、ラインハルトの『最良の専制政治』を“是”とするのは自然でしょう。
『銀英伝』には日本版『
スター・ウォーズ』(以下『
S.W.』)といった側面もあるかと思います。
本家米国の『S.W.』には米国(或いは北米市民)の民主主義に対する絶対的な肯定と自信と信頼が、能天気なくらいに感じられるかと思います。

(&

?)
対して日本の『銀英伝』では、政治屋どもに内側から食い破られて、形骸ばかりに成り果てた同盟政府の“民主主義”が、虚しく描かれるばかりです。
『銀英伝』が発表された当時(或いはそれ以前)から今日までの、日本の民主主義のお寒い現実が如実に反映されているのではないでしょうか?
今日の欧米先進諸国(例えば『王国』の英・蘭や『共和国』の独・仏など)を見比べると、近代社会にとっては『民主主義』や『社会主義』が進化し続けてさえいれば、国家という入れ物が『
共和制』でも『
立憲君主制』でもあまり大差は無いようにも思えてしまいます。

…
日本での報道を見聞きする限りでは、階級社会の残る
立憲君主制の英国よりも、星条旗のもとでの平等を謳う
共和制の米国の方が差別の問題が深刻そうな状況を見ると、必ずしも共和制が制度として絶対的に優れている訳ではないようにも思えます。
『専制』と『共和制』の中間に『
立憲君主制』という第3の道があります。
しかし『立憲君主制』の概念が作中で具体的に提示され始めるのは、
ユリアン・ミンツがラインハルトと直接交渉ができるようになる頃からではないでしょうか。
もし立憲君主制の概念がその社会に無ければ、『銀英伝』における帝国と同盟のように、『
封建主義者』と『
共和主義者』が際限なく争い続ける事態も有り得るかと思います。
そもそも論として、作中の人類社会はダゴン星域会戦の後に何らかの妥協点を見出すべきだったのだと思えます。
ゴールデンバウム朝銀河帝国は自由惑星同盟の国家元首を“新領土”の“国王”としての格付けで遇し、その自治権を付与する形式を取れば、帝国は面目を保ち、同盟は実利を得て双方ともに矛を収めることが出来たのではないか?(事実、後に発足したフェザーン自治領は帝国に対してそのような伯爵領?の形式を取っております。)、その後150年も戦争を続ける必要は無かったのではないか?とも思えてしまいます。
膝を屈することに問題があるのなら、同盟市民に限っては立礼で済ませれば良かったのではないでしょうか。
人類社会の全ての責任を一身に背負うべき銀河帝国の皇帝であるならば、広大無辺な“新領土”の開拓に多大な貢献を果たした同盟市民に限っては、その功績に相応しい遇し方を示し、もって全人類の国家元首たる銀河帝国皇帝の度量の広さを見せ付けても良かったのではないか?とも思えてしまいます。
まぁ、そこで終わってしまったら、『銀英伝』の物語は始まらないのですが…。(^^ゞ
『銀英伝』の問いの答えは、『立憲君主制』にあるのではないか?と個人的には思えてしまいます。
そして『共和制』と『立憲君主制』の更にその間に、『
象徴天皇制』は位置していると思います。
現日本国においては天皇は
国家元首でも
主権者でもなく、あくまでも
象徴に過ぎません。
立憲君主制では「
君臨すれども統治せず」とも言われますが、現日本国における天皇は、“君臨”していると言うほどには“君臨”しているイメージさえも無いのではないかと思えます。
『象徴天皇制』は、特に平成以降の『象徴天皇制』は、
限り無く共和制に近い帝制とも言えると思います。
その意味では『銀英伝』という作品は、暗に『象徴天皇制』を礼讃した内容でもあるのではないか?とも個人的には思えてしまいました。
『S.W.』が米国(或いは北米市民)の民主主義に対する絶対の自信や信頼を反映しているのに対して、

(&

?)
ともすると形骸化しかねない日本の民主主義を危ぶみつつも、今日の『象徴天皇制』を暗に礼讃している所などは、『銀英伝』は現日本国の社会や“お国柄”を充分に反映したSF作品なのではないか?とも感じます。
・・・近頃では「天皇を再び国家元首に」,「天皇を再び主権者に」と天皇を再び祀り上げて、戦前や戦中のように天皇を政治利用し抜こうと企てる
旧体制・戦前レジュームの封建主義的な勢力の蠢動が露骨になりつつあるようですが、
物語としての『銀英伝』の更なる普及と読者層の拡大は、そのような
反動勢力に対する牽制にもなり得るのではないか?とも考えます。
・・・・・な〜んてコトは、“
銀英伝の問い”に対する、一読者に過ぎないおいらのごくごく個人的な回答に過ぎず、そーゆーコトは個々の読者がそれぞれに考えれば良いことかと思います。
中には「牛馬に等しき臣民どもが、卑しき平民の分際で立場もわきまえず、思い上がった考えを心の内に隠し持つとは、何と恐ろしい事かっ!! 帝国の恩寵を何と心得る !? もの言う家畜のクセに、不敬も甚だしいではないか !!」というブラウンシュヴァイク公爵的・封建主義的な意見の人も、ごく稀にはいるのかとは思いますが。(^_^;) …こわーっ
『銀英伝』は良い意味で大衆娯楽小説でもあるので、小難しいコトは抜きにして、まずは楽しんで読めれば良いのではないかと思います。

そんな訳で、新しい読者への間口を広げるという意味でも、(新アニメ版の情報は未だ少ないようですが)ヤンジャンでの連載等の、『銀英伝』の新しい動きには注目であります。
・・・ごく個人的,一読者的な回答としては以上であります。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました。m(_ _)m
それでは皆様、 \(^o^)/
ビバ!デモクラシー!
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