Koch Schwann 3-1444-2 2CD 1994
これは、ウィーン国立歌劇場で行なわれた1933年から1944年迄の公演を記録したKoch Schwannで発売された歴史的録音からだが、殆んど断片なのが惜しく、音質もバラツキがあるので鑑賞にも差し支えがあるのは残念だ。そんな感じなので決してベストとも言えないが、その代わり記録性に於いては大変貴重な録音集だと思う。ここでは、R・シュトラウスの楽劇から「エジプトのヘレナ」「影のない女」「ダフネ」の3作品の抜粋が収録されている。指揮者は、クレメンス・クラウス、カール・ベーム、ルドルフ・モラルトの3名である。そこでは「影のない女」が巨匠の指揮で聴ける。収録は、1943年11月23日である。と言う事は、国立歌劇場総監督に就任した年の公演記録だ。幸い巨匠の演奏は、断片ながら収録時間が長いので流れが解る。音質も意外と良く巨匠ならではの凝縮された緊張感の強い演奏が聴ける。だが古い録音に慣れてる人でなければ辛いものだろ。歌手は、皇帝のトルステン・ラルフが素晴らしく、皇后のヒルデ・コネツニのリリックだが伸びの在る声にも魅了される。巨匠らしいのは構成面が、しっかりしている事だが、確かにどの箇所を聴いてもで安心して聴いてられる。バラクは、ヨゼフ・ヘルマンだが、流石に風格豊かである。オケの情景描写も申し分無い。瑞々しい響きにハッとする瞬間さえある。録音は古いが是だけキッチリと鳴るR・シュトラウスも暫く聴いていない。しかし途中混信音があるのが残念だ。第2幕は、幸い前奏曲から聴く事が出来るが、目の覚める様な音色の後に室内楽的な響きに変わるが、其の辺の繋がりが絶妙で中々聴かせる。ここは、トルステン・ラルフの歌い出しまで収録されている。朗々と響く声に此処でも聴き惚れてしまうが、レコード用の録音とは、スケールが大きく感じるが気のせいか?コネツニの存在感は、この幕の方が際立っている。第3幕は神秘的なオケの響きの中からバラクの妻、エルゼ・シュワルツの声が浮かび上がる。だがエルゼ・ベットヒャーの鷹の声は聴き辛い。聴き通して思った事だが、この作品に関しては既に完成度が高く、巨匠の解釈も後年に通じるものが在る。全曲収録されていないのが惜しまれる。C・クラウスとR・モラルトについては、このブログの主旨ではないので割愛する。

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