Polydor Japan 92MG 0650/3 (410 887-1) 4LP
4枚目である。曲は、ブラ―ムスの交響曲第1番である。収録は、3月22日の公演からで会場は、勿論NHKホールである。3月17日の演奏は、テレビで放送されたりDVD化もされているので、実際に指揮振りを観れて感慨深いが、こちらの22日の演奏をこのレコードで初めて聴いた時は、何か生煮えと言うか、ピンと来なかった思い出が在る。それは私の年輪も影響していると思うが、今回、聴き直す事で、どんな発見が在るかとも思うので、初めて聴く様な気持ちで久々に針を降ろしてみた。序奏部が鳴った時点で緊張力が薄い感じが在るが、それは楽員が会場に慣れてきたと言う事か?これは、全集に在る同曲と同傾向の演奏に聴こえる。とても理性的な反面、迫力も半減している印象を受けた。それでも骨格がしっかりしているので所謂男性的な豪放な響きは健在である。聴いていると少しずつだが演奏に熱を帯びてきた。第2楽章は、少しも流麗では無いのが巨匠らしくて良い!旋律は、とても大切に扱われており、無骨で深い響きが聴き取れる。重厚な表現が、如何にもブラームスらしい!第3楽章は、とてもサラリと始まるが、巨匠と楽団のコンディションも快調なのか表現も自在である。やっとエンジンが掛った感じだ!弦も優美で流石ウィーン・フィルである。終楽章は冒頭から気字壮大で目が覚める程だ!緊張が少しも緩まないのも良い!アルペン・ホルンを思わせる例の箇所も雄大でアルプスの山々を見下ろす風情が在る。木管も良い音を出す。それと聴いていて気がついたのだが、棒が走り気味なのかリズムが前のめりに成る箇所も在るのが興味深い!推進力も凄まじくコーダに向かって突進する迫力は実演ならではである。この時代もこんな熱演も在るので晩年は枯れてきたと言う批評もあんまり宛てに成らない!次に「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕前奏曲が収録されている。これは、3月25日の演奏である。プログラムを拝見すると最終日のアンコール曲とある。テンポは中等より少し遅い位だが、カラヤンやサヴァリッシュの様にレガート・レガートしないのが良い!部厚く豪快な音で音楽の喜びを表したような演奏である。流石、巨匠の十八番だけの事はある。この演奏に下手な批評は必要ないだろう?
92MG 0653


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