Polydor Japan POCG-2664/6 419 890-2 2CD 1992
巨匠のバイロイト初登場は、1962年なのだが、ワ―グナーも巨匠の重要なレパートリーだった。巨匠が若き日に師事したのはカール・ムックだったが、カール・ムックもバイロイトにとても縁の在る指揮者だったので、少なからず影響を受けたと言っても過言でも在るまい!さてバイロイトで巨匠が最初に取り上げた曲目は「トリスタンとイゾルデ」だったが、幸いにも独.DGGがライブ録音をしてくれた御蔭で全盛期の巨匠の演奏様式を鮮明に聴く事が出来る。収録は、1966年の公演が元に成っている。ゲネプロの音源を中心に纏めたとの事だが、勿論本番での音源も補充に使用されており、編集により完璧な巨匠のワーグナーへのアプローチを聴く事の出来るCDでもある。嘗てアナログ盤で発売されていた時は5枚組で最終面にリハーサルの様子が収録されていたので面白く聞く事が出来たが本CDには楽曲のみの収録で些か物足りない!しかしながら利点も在り、各1幕共中断無しに聴く事が出来るので臨場感はアナログ盤以上である。さて巨匠とワーグナー家との関りも深いようだ!確か音楽祭オープニングの第九も1963年に指揮をしているし、バイロイト音楽祭100周年の記念式典にも全曲ではないが一振りしている。この音楽祭では事実上の音楽監督的な立場に在ったので尚更だが、ヴィーンラント存命中の音楽祭では重要な指揮者だった。最後は1971年に参加したが、音楽祭出場後も縁が深かった音楽家だった。現在では、そのバイロイト音楽祭も巨匠不在で面白味を大して感じられないのは残念だが戦後の音楽祭の黄金期と巨匠の全盛期がシンクロしているのは幸運だった。歌手についても此処まで揃った事は無いだろう!さてこの演奏だが、巨匠自身が「前奏曲の最初の音から愛の死のエンディングまで、正に一本の線のように緊張が持続し、感興が高められていく、このような演奏が《トリスタン》では出来た」と評価しているのは回顧録を読むまでも無く明らかである。散々語り尽くされている演奏なので、これ以上述べるのが野暮な感じだが、イゾルデのビルギット・ニルソンやトリスタンのヴォルフガング・ウィンドガッセンの組み合わせは聴いていると不滅と言って憚らない名唱であると言えるだろう!当時のバイロイト祝祭管弦楽団の凛とした響きも良い!聴き始めると時間を忘れてしまうCDである。もっと書くべき点は在ると思うが音が鳴っている間は、すっかり虜に成ってしまう!


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