独.ACANTA DE23,133/34 2LP 1979
巨匠最古の「フィガロの結婚」である。1938年の収録とある。全曲盤だが、レシタチーヴォ等は割愛されている。原盤は良好と思われるのに過度な残響加工で無残な状態と化している。原盤の硬質な音質の改善を試みたと思われるが、細部の音型は不鮮明となり、実に聴き辛い!過度な補正は厄介なものである。しかしその様な愚行を考慮して聞けば若き巨匠の姿も垣間見る事が出来る。しかし序曲は軽快だが心なしか忙しなく感じる。つまり余裕が無いのだ。楽団は、シュトゥトガルト放送交響楽団である。そんな感じなので当然完成度にはムラが在る。だから幕が開いてからのフィガロとスザンナのやり取りも軽快と言ってしまえば其れまでだが、落ち着きがなく聴いていても「何だか?」てな状態になる。歌詞は独逸語である。だが演奏自体の流れは良い!このレコードを聴いていると嘗てカール・ムックが若き日の巨匠に言った「お前は、ワーグナーを指揮してもポルカみたいだ。」との逸話話を思い出す。確かにキレは良いが、それだけが取り柄の演奏なので、単に勢いだけしかない。さて歌手だが、フィガロは、パウル・シェフラー、スザンナは、マリア・チュボターリである。パウル・シェフラーが元気に聴こえるのは、巨匠のテンポ設定が早いからだろう。しかし時に誇張が気になるのは、当時の歌唱スタイルにも原因が在ると思う。アルマヴィーヴァ伯爵は、なかなかの貫禄だ!歌うのは、マティーユ・アーラスマイヤーである。全体に歌手の調和は取れてる様で音色が合っていて不自然さがないのは救いか?マルガレーテ・テシェマッシャーの伯爵夫人は品格よりもたくましさを感じる。ケルビーノは、アンゲラ・コルニアクだ!声は、こちらの方が良い!少年の純情さを上手く表現している。変な誇張も無く好ましい!全体を通して巨匠の表現が余りにもアッサリしてるが仕方在るまい!これは若き日の巨匠の演奏である。尚、演奏には関係の無いことだが、耳を澄ますと針音が聞こえるのでディスク収録である事が判る。
2010.01.03 の記事より改正

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