PREISER Historische Aufnahme 90152 2CD
ザクセン時代の放送録音である。音質も正式の物だけ在って、状態が良い!収録は、1942である。歌手達も当時のザクセン時代のアンサンブルで御馴染みの顔触れだ!配役は、エリザベート・ヘンゲンのカルメン、トルステン・ラルフのドン・ホセ、ヨーゼフ・ヘルマンのエスカミリオ、エルフレーデ・ヴァイトリヒのミカエラが主要歌手である。一見して、これはワーグナーか?と思うが、独逸語訳詞と言う事も在り演奏も極めて独逸風である。だがスペインが舞台と成っている筈のこの歌劇も仏蘭西語で歌われるのがオリジナルで在るので別に原語は大して重要では無い作品である。滑稽でも舞台がスペインである事が解れば良いだけだ!日本では浅草オペラで当たった人気曲でも在り、藤原歌劇団でも重要なレパートリーでもある。さて演奏だが、腰の低い重厚で安定性が在るどっしりとした序曲から始まる。唸りを上げて進んで行くので、まるで重戦車が突進する様である。そして幕が開くと合唱から始まるが、聴いていると「これはウェーバーか?」と言った雰囲気で、狩人の合唱みたいだ!続く少年合唱団もヒトラーユーゲントの様である。流石オペラ指揮者だと感心するのは全く流れの淀み無く有機的に歌手と絡み合う点である。気が付くと何の違和感無く耳に入ってくるのは若き巨匠の才能だろう!ヘンゲンのカルメンは低音に独特の凄味の在る声をしており、「ハバネラ」は、とても魅力的である。スタイルの違和感は確かに在るかも知れないが慣れると中々楽しめる演奏だ!傑作は、ヘルマンの歌う「闘牛士の歌」である。巨匠は律儀にも厳格にリズムを強く踏みしめて演奏する為、軍歌の様に成ってしまった。ラルフのドン・ホセは意外と軽い!管弦楽が充実しているので第3幕の前奏曲も素朴ながら芯の在る音楽が聴こえてくる。終幕の激性も充分であり、舞台が目に浮かぶ様な描写力が在る。

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